平家の落人、隠里

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先月、父が肉体を離れ、旅立ちました。
生まれた時から、私の一番の理解者になろうといつも努力をしてくれて、
そして、私が困ったときには、必ず助け船を出してくれていた
そんな父が目の前からいなくなるということは、
これまでに自分で想像していたよりも、大きな喪失感を感じています。

そんな父の葬儀の時、動かなくなった父の姿をジッと見つめていると、
遠い昔にも、同じことがあったことを思い出すということがありました。

さすがに、過去の詳しいシチュエーションまではわかりませんでしたが、
私たちが生まれる遙か昔にも、やはりこうやって、
父を見送ったということがあったんだと、
そんな思いが、ハッキリと出てきたのでした。

その思いが出てきたのは、通夜が終わり、
葬儀会場の親族の控え室で、親しい親戚が集まって、
いろんな話を聞いていたときのことでした。

何人かが集まって、それぞれの思いを口にしている中、
私の従兄弟にあたる人のひとりが、
私たちの先祖の話をしてくれたのでした。

それは、父方の先祖は、平家の落人であったという話でした。

確かに、父方の実家は、山奥のさらに奥に入ったところにあるのでした。
まわりを田んぼと山に囲まれた細い一本道をずうっと入っていくと、
そこにいきなり、まるで隠れるようにしてできた集落があり、
そこが父の実家だったのです。

子供の時は、実家とはそういうものだと思っていたので、
それを不思議には思っていなかったのですが、
確かに、いまになって考えてみると、
そんなところに集落があること自体が、
なにか訳ありであることが理解できるのでした。

私は若いときに、家を出ていたし、
子供の時は、「平家が怖い」と言っていたこともあって、
その話を直接に父から聞いたことはなかったのですが、
弟には、「うちは平家の子孫だ」と、ときおり話していたと、
後になって聞くことができたのでした。

そんな話を聞いた直後に、
父をこうして見送るのは初めてのことではないとハッキリと感じたのですが、
その話のせいか、過去に父を見送ったときは
父も私も武士で、そのときも父は私の父であったのだと、
そんなイメージが父を見ていると、出てきたのでした。

もちろんそれは、そのときの私が平家であったというわけではありません。
というよりも、そのときは、どういう武士であったかまでを
思い出すことはできなかったと書いた方が正確です。
ただ、私は、その過去生では、亡き父の後を継ぐ身であったという
思いだけが出てきたのでした。

そういえば、今生、私が母のおなかに身ごもったとき、
私が生まれてくるまで、父はずっと私が男として生まれてくると
信じきっていたそうです。
しかし、実際におなかから出てきたのは女の子だったので、
父はショックを受け、そのまま私の名前も付けずに
やけ酒を飲みに行ってしまったのだと、母から何度も聞かされたものでした。
父は、男の名前しか用意していなかったので、
結局、私の名前を付けたのは、私のおじであり、
母のお兄さんだったということでした。

今の時代に、父親がそんなことをしたら、
女性差別だとひんしゅくを買いそうですが、
当時の田舎では、それが普通に通っていたということです。

その後は、父と娘という立場にあって、むしろ、父と息子であるよりも、
仲が良かったのではないかと思えるのですが、
それでも、私が成長してからでも、なにかあるたびに、
「おまえが男であれば良かったのに」
と、愚痴をこぼすことが何度かあったのでした。

もしかしたら、そんな父の思いは、
過去生において、私が父の息子であったから、
父が、そこまでは理解はしていないとは思うものの、
その影響で、そんな思いが出てきていたのではないかと
感じたりするのでした。

それにしても、父が亡くなったことで
そんなような、私たちのルーツを聞くことになったのが、
少し寂しいような気もします。
生きているうちに、ちゃんと話を聞いておけば良かったな。

でも、平家の話を聞いたのがそのタイミングだったからこそ、
父との過去生のつながりを思い出すことができたようにも感じて、
ちょっと複雑な気持ちもあります。

それにしても、自分たちの先祖への思いというのは、
他の親戚たちは意外にも強いようで、
私のいまの夫が、実は源氏とのつながりが強いということを
その場で夫が話をしたとたんに、
「あなた方はそのうち別れることになるかもしれませんね」
と目をつり上げて話をしてきたりして、
それが逆に、ちょっとおかしかったりもしました。

いずれにしても、いまの私自身に落人のような思いが、
心の奥底にあるときでもあったので、
それらの話は、自分のいろんな意味でのルーツを知るための
父からの最後のプレゼントであったようにも思えています。

そして最後に、お父さん、今生も、本当にありがとうございました。


※平家の落人とは、治承・寿永の乱(源平合戦)において敗北し僻地に隠遁した敗残者のこと。主に平家の一門及びその郎党、平家方に加担した者が挙げられる。平家の落武者ともいうが、落人の中には武士に限らず公卿や女性や子供なども含まれたため、平家の落人というのが一般的である。こうした平家の落人が特定の地域に逃れた伝承を俗に「平家の落人伝説」などという。
ウイキペディアより





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