猫は毛皮を着替えて帰ってくる 第3話

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話はまた今年に戻ります。

先住のくうちゃんに対して、今年になって新しくお迎えした子は
ダイちゃんと呼ぶ事にしました。

乳飲み子から育てたくうちゃんは、とにかくやんちゃな子で、
ジッと家に閉じこもっていることなど、何年経っても出来そうにありません。
私としては、本当は完全家ネコとして育てたいと思ってはいるのですが
できないものは仕方が無いので、毎日、リードを付けてネコのお散歩に出掛けています。
くうちゃんの方も、仕方なくですが、それで一応の納得はしてくれているようです。

そこで、ダイちゃんをお迎えした日は、作戦として、
くうちゃんの散歩の前に、ダイちゃんをショップから連れてきて、
そしてダイちゃんを車に乗せたまま、私がすぐにくうちゃんを散歩に連れ出し、
その間に、とりあえずダイちゃんがいることになるケージをセッティングして、
ダイちゃんを家の中に入れるということにしました。

しかし、くうちゃんの散歩が終わり、家に入ろうとしても、
くうちゃんは、何かとても渋っています。
そういえば、さっき私が家に帰ったときも、ダイちゃんは車に乗せたままだったのですが、
くうちゃんは、何かを察していたようで、
いつものように玄関には迎えに来ないで、高いところに登って
フギャーフギャーと、いつもに増してうるさく鳴いていました。
私はそれを無視して、散歩に行こうと言うと、
くうちゃんは散歩に行きたい気持ちの方が勝ったようで、
素直に従って、家を出たのでした。

第1話でも書いたように、これまでの先代のネコたちの時とは違って
新しい子との出会いは、そう簡単にはいかないかもと、
くうちゃんとの散歩から家に入るときに思ったのですが、
家に入ってみると、案の上の結果が待っていました。

ダイちゃんのケージはリビングに設置してあったので、
くうちゃんと一緒に部屋に入ったとき、
なぜだかダイちゃんは、くうちゃんの姿を見るや、
ケージの中から、なにか懐かしそうな顔をしたかと思うと、
家に入る前から警戒しているくうちゃんに対して、
いきなり身を乗り出して、ケージ越しにハナチューをしたのです。

ハナチューは、鼻と鼻を合わせるワンちゃんやネコちゃん同士が行う
親愛を込めた挨拶です。

警戒しまくっていたくうちゃんは、一瞬何が起こったのかわからなかったようで、
数秒ほど唖然としていましたが、すぐに正気に戻ると、
新人のダイちゃんに対して、シャーッと威嚇を始めました。

ただ、ダイちゃんはケージの中に入っているので、
それほどは、ひどい威嚇ではなかったのものの、
くうちゃんはケージの周りを警戒しながら通り過ぎて行ったのです。

ダイちゃんの方は、そんなくうちゃんの姿を
ずっと切なそうな目で追いかけていました。

くうちゃんはダイちゃんの存在に慣れるまでの間、
ダイちゃんは、新しく来たこの家の空気になれるまでの間、
しばらくはケージで生活をしてもらうしかないと思って二日ほどが過ぎた頃です。

くうちゃんは、1日1時間ちょっとは、どんなときでも散歩に行きたがるので、
そのときだけは、ダイちゃんは家の中で自由にしていましたが、
ペットショップのケージよりも、さらに狭いケージに
だんだんとダイちゃんも疲弊してきたようでした。
そこで、二日目の夜には、くうちゃんがいても、ダイちゃんをケージから出してみました。

そのときは、くうちゃんは、ダイちゃんが登ってこられないであろうと思われる
高い場所に陣取って、ダイちゃんの様子を観察していました。

その様子は、それまではずっとケージの中から、
一方的に親愛のまなざしを送り続けるダイちゃんに対して、
それほどイヤな感情を抱いている様子は感じられなかったものの、
やはり、そう簡単には、警戒心を解く事はできないぞ、という雰囲気でした。

そうして、ダイちゃんがリビングをゆっくりと探索した後、
今度は、無駄に広い玄関の向こうに側に位置している
一階部分のもう一つの部屋である
コンサルテーションルームへと移動しようとしていました。

そうなると、高みの見物をしていたくうちゃんには
ダイちゃんの様子が見えなくなってしまいます。
そのため、くうちゃんもいったん下に降りて
ダイちゃんの後をソッと着いていこうとしました。

すると、向こう側に行こうとしていたダイちゃんは、すぐさま戻ってきて、
今度はケージ越しではなく、
いきなり、くうちゃんに直接ハナチューをしてしまいました。

またもやビックリしたのはくうちゃんです。
一瞬、凍り付いたように動きが止まった後、
今度は、これまでにないくらいの激しい威嚇が始まってしまいました。

にもかかわらず、ダイちゃんはまったく動じる様子は無く、
隙があれば、くうちゃんに対して、挨拶のハナチューを繰り返します。
くうちゃんが激しく攻撃しようとしてくると、
ダイちゃんはふせのポーズをして、くうちゃんに対して
敵意がないことを示し、そしてまた隙を見てハナチューです。

それはまるで、ただ怒っているくうちゃんを、
まだ、ひと回りも小さなダイちゃんが、
一生懸命になだめているように見えていました。

そんなダイちゃんの態度には、さすがのくうちゃんも
まともに攻撃することはできなかったようで、
くうちゃん自身がカーテンの後ろに隠れて、シャーシャーと威嚇を繰り返していました。

私にとっては、ダイちゃんの、そんな捨て身なまでの態度も不思議でしたし、
そんなことが出来るネコがいるんだということも不思議でした。


次回に続きます。


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庭でネコ草を食べるくうちゃんとダイちゃんです。




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